糖尿病とは
血液中の血糖値が上昇し、尿に糖が出る病気です。
糖尿病の多くは遺伝的素因だけではなく高カロリーな食生活の継続、日頃の運動不足やストレスなどの生活習慣によります。
全身の血管、臓器に悪影響を与え、最初は無症状で経過しても放置していると、合併症を引き起こすことが、問題となる病気です。
合併症は3大合併症として、1)神経障害、2)網膜症、3)腎症があり、この順番に進行すると考えられています。この他にも心筋梗塞、脳梗塞の危険も増すことが知られています。
したがって、初期からの良好な血糖コントロールが重要となります。
HbA1c数値の変更について
HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)とは、過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均値を反映し、糖尿病の診断にも使われます。
国際標準化に伴い、2012年4月から、新しいHbA1c(NGSP)が使われることになりました。
これまでのものから、およそ0.4%高くなります。
※以前のHbA1cの数値と比較するときは、0.4%引いて考えてください。
HbA1cには国際的に広く使用されているHbA1c(NGSP)と、日本でこれまで使用されてきたHbA1c(JDS)があります。
今後は日本でも、HbA1c(NGSP)を使用することになりました。
(※日本糖尿病学会資料参照)
糖尿病の分類
糖尿病は(1)1型、(2)2型、(3)その他の特定のしくみ、疾患によるもの、(4)妊娠糖尿病の4つに大きく分類されます。
食生活、肥満、遺伝的要因が背景となるのは、2型糖尿病で、日本の糖尿病の90%以上を占めます。
4つの型について
1型 | 遺伝などでは無く、後天的な原因により、すい臓から出るインスリン(血糖値を下げる、唯一のホルモン)が分泌されなくなり発症します。インスリンが絶対的に不足している状態のため、必ずインスリンが必要になります。 |
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2型 | すい臓からでるインスリン(血糖値を下げる、唯一のホルモン)が、様々な原因で不足したり、その効き目が悪くなったりすることで血糖値が上昇しています。発症には家系などの遺伝要因や生活習慣などの環境要因が密接にかかわっており、いくつもの要因が重なり合って発症すると考えられています。 |
その他特定の型 | 内分泌系の病気や膵臓、肝臓の病気、ある種の薬剤、遺伝子異常などが原因で発症する糖尿病です。 |
妊娠糖尿病 | 妊娠中に初めて見つかる軽い糖代謝異常を、妊娠糖尿病といいます。(明らかな糖尿病は妊娠糖尿病には含めません) |
糖尿病の検査・診断
糖尿病は、診断時および初期に行われる検査と治療過程において効果や合併症の有無などを確認するために継続して行われる検査があります。
診断時および初期に行われる検査
血糖値による診断を行います。血糖値は診断のためにまず参考にされる検査値で、空腹時血糖値、随時血糖値、食後2時間血糖値、75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT)による血糖値などを測定し診断します。
治療過程において継続して行われる検査(日常の検査)
インスリン分泌量の測定 | インスリン分泌量を測定することによって病態が推定でき、1型糖尿病か2型糖尿病かを診断できます。 |
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血糖値の測定 | 血糖値のコントロールがきちんとできているかどうかを把握するために、空腹時血糖値、食後2時間血糖値を定期的に測定します。 |
ヘモグロビンエーワンシー (HbA1c) |
食事の影響を受けないため、血糖値のコントロールがきちんとできているかどうかを把握する指標として適しています。食事の影響を受ける血糖値とは異なり、採血時から過去1、2ヵ月間の平均血糖値を反映しています。 |
グリコアルブミン | HbA1cよりも血液中に存在する期間が短く、採血時から過去約2週間の平均血糖値を反映しています。 |
血圧、血清脂質 (コレステロール、中性脂肪) |
糖尿病の合併症である脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患は、高血圧や脂質異常症(高脂血症)が重なる事で発症の危険度が高くなります。そのため、血圧や血清脂質のコントロールも重要になります。血圧値はご家庭でも測定できます。 |
視力検査、眼底検査、視野測定 | 三大合併症の一つである網膜症では、視力や視野の検査のほか、網膜や硝子体での新生血管や出血などを確認するため、眼底の血管や網膜などを調べます。 |
糖尿病の治療
糖尿病の殆どを占める、2型の方は、長年にわたる食生活が原因となっていることが主です。そのため、まず食事指導、運動療法等が基本となります。
食事療法、運動療法を十分に行っても、良好に血糖値がコントロールできない場合には薬物療法を併用します。また、インスリンが絶対的に不足している1型糖尿病の方にはインスリン注射による治療が基本となります。
飲み薬には、インスリン分泌をすい臓に働きかけて促す薬、食後の高血糖に対して血糖の吸収を遅らせる薬、インスリンの効果を高める薬、血糖値が高い時にのみ効果を発揮する薬などがあります。
食事療法
糖尿病のタイプ(1型や2型など)にかかわらず、糖尿病の治療において基本となる治療方法です。
糖尿病の食事療法では、食べてはいけない食品があるわけではなく何を食べても構いませんが、適正なエネルギー量を適正な栄養バランスで適正な時間に摂取することが重要になります。また、外食や間食、アルコール摂取時などは1日に摂取するエネルギー量が過剰になりがちですので、注意が必要です。
運動療法
食事療法とともに、糖尿病治療において基本となる治療法です。
運動によって、ブドウ糖や脂肪酸の体内での利用が促進されて血糖値を低下させたり、インスリン抵抗性を改善したりすることが知られています。ただし、合併症がある場合や薬剤で治療している場合は運動が制限されることもありますので、運動の種類や強さ、時間、回数などは医師の指導の下、適正に行うことが必要です。
薬物療法
糖尿病の薬物療法には、経口血糖降下薬とインスリン注射があります。
1型糖尿病ではインスリン注射が不可欠ですが、2型糖尿病では食事療法や運動療法を行っても血糖値が高い状態が改善されない場合は、まずは経口血糖降下薬を服用します。それにもかかわらず、血糖値が改善されない場合は、経口血糖降下薬の増量や2剤以上の併用、さらにはインスリン注射の併用や、インスリン注射への切り替えが行われます。
低血糖のリスクの少ないお薬 〜 DPP-IV阻害薬 〜
糖尿病治療では、下にご説明していますように、低血糖が高い頻度でみられます。この副作用を単独の服用では解消してくれる画期的なお薬があります。DPP-IV阻害薬といいます。
通常、人には、食事をして血糖値が上昇すると、消化管ホルモンであるインクレチンとういうホルモンが分泌され、膵臓のベータ細胞から、インスリン分泌を促すというメカニズムがあります。DPPIV阻害薬は、そのインクレチンの働きを強化する、他にはないタイプの内服薬です。つまり、食事をして、血糖が上昇したときのみ、インスリン分泌を促すため、血糖値が低いときには、インスリン分泌を促すことがありません。したがって単独で内服する場合には、低血糖のリスクが非常に低くなります。また、インクレチンを強める働きではなく、インクレチンそのものを注射できる注射薬もあります。
血糖コントロールを行う際に常につきまとう、低血糖の問題を解消する薬は、患者さんにとっても、医師にとっても安心して使用できます。ただし、この内服がすべての患者さんに有効ではありません。また、他の糖尿病治療薬との併用では、低血糖が生じることもあります。
糖尿病の日常生活の注意点
糖尿病では治療における副作用や糖尿病症状により、日常生活に注意を要します。
低血糖に注意しましょう
糖尿病治療中において高い頻度でみられる副作用です。低血糖とは、一般に血糖値が70mg/dl以下になったときをいいます。
経口血糖降下薬やインスリン注射などの量を間違えたり、食事の時間が遅れたり、食事の量が少なかったり、いつもより長時間激しい身体活動を行ったりすることで引き起こされます。血糖値が下がりすぎることにより、脳内では主要なエネルギー源であるブドウ糖が不足して、さまざまな症状が生じます。
低血糖の症状
症状としては、冷や汗、ふらつき、動悸、頻脈、手指のふるえ、顔面蒼白、頭痛、目のかすみ、異常な空腹感、眠気(生あくび)、さらにひどくなると、意識レベルの低下、異常行動、けいれん、昏睡などを生じます。
低血糖の予防
低血糖を予防するためには、まずは、いつもの食事や運動の量や時間などを変更しないことです。さらに、薬剤の服用(インスリン注射も含む)については主治医の指示を必ず守ることが重要です。
低血糖の症状が現れたら・・・
低血糖と感じたら絶対にガマンせず、ブドウ糖(5~10g)や糖を含む飲料水を取って、安静にしてください。α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している場合は、必ずブドウ糖を摂取してください。摂取から約15分すぎても症状が改善しない場合は、もう一度摂取します。おさまらない場合は直ちに医療機関に連絡してください。
低血糖は突然起こりますので、外出時には角砂糖やブドウ糖、あめなどを常に持ち歩くようにしてください。 患者さんの意識がなくなったときは、応急処置として、グルカゴンが手元にあればご家族が注射します。一時的に意識が回復したとしても、必ず医療機関を受診してください。
シックデイ(病気になったとき)に注意しましょう
「シックデイ」ご存知ですか?
「シックデイ」とは、糖尿病治療中に風邪をひいて熱がでたり、下痢や嘔吐、食欲不振などで、いつも通りに食事ができない状態のことを言います。このような体調の悪いときには血糖コントロールが乱れ、高血糖になったり、食事が十分に取れず血糖値がいつもより低くなったりするため、経口血糖降下薬の服用やインスリン注射の量と時間などをどのように調整するか、あらかじめ受診時に相談しておくことが重要です。
また、すぐに医療機関に連絡し、指示を受けるようにしてください。必要な場合は、すぐに受診しましょう。
体調がすぐれないときは早めに対処することが大切です。
入浴・シャワーは気をつけましょう
神経障害では、ちょっとしたケガに気づかないことがあります。また、足先の感覚が鈍り、熱さを感じないことがあります。やけどを防ぐために、湯船に入る前やシャワーを浴びる前には、必ず手などで湯加減を確かめてください。
足のケア(フットケア)をしましょう
糖尿病患者さんは、血行障害や神経障害などで足病変を合併しやすくなっていますので、足の手入れはとても大切です。
足は常に清潔に保ち、足の観察を毎日して傷がないか確かめましょう。家族にも定期的(1週間に1回くらい)に足を見てもらいましょう。
靴はきちんと足に合ったサイズを選び、下駄、サンダルは、傷をつくりやすいのではかないようにしましょう。靴を履く前には中に小石や針などの異物が入っていないかをよく確認してください。靴下は白の通気性のよい綿のものを選び、毎日履き替えましょう。
また、爪は深爪をしないように気をつけ、一直線に切り、水虫やタコなどは皮膚科で治療してもらいましょう。湯たんぽや電気あんかなどはやけどの原因になるので使わないようにしてください。
この他に、常に足の指の間を乾燥させておくことも足の状態を良好に保つために重要です。
分からない事はまずご相談ください
この他にも日常生活において、食事は出来るだけ同じ時間帯とる、カロリーオーバーに注意する、毎日適度な運動を続ける、お酒は指導のもと上手に付き合うようにする、など糖尿病の改善として日常的に行わなければならないことは、健康を目指す生活となんら変わりかりません。必要な知識と備えをもてば糖尿病でも安心して元気に日々を過ごすことができます。
分からないことは自己判断せず、まずご相談ください!